何の留め具もない白い箱が、目の前で喋る友達の背後に置かれている。
その箱の持ち主は僕ではなくて、僕はその箱の中身が何なのかを知らない。
何、それ。何が入ってるの? 聞きたいけど、聞くと気分を悪くされそうで聞けなかった。
「それであの……友達が」
友達が、と言う前の一瞬の間。躊躇い。どうせ友達じゃなくて彼女の話なんだろうと思った。
箱の中身は、彼女へのプレゼントかもしれないと思った。何にしたって、僕のためのものではない。
「……だから、……で」
彼が一生懸命話す内容も上の空でよく分からなかった。
なんだろう。ずっと肺のあたりが変な感じだ。
「なんか気分悪い?」
聞かれてはっとする。首を振った。
「別に大丈夫」
大丈夫。
大丈夫かな。でも、大丈夫かどうかもよく分からない。
ただ逃げたい。でも逃げたら、こいつは彼女へ連絡して二人で過ごすんだろうと思うと癪だった。
癪だ。そっか、嫌なんだろうな。
判然としない。何もかもが靄の中だ。
「今日はもうお開きにして帰ろうか」
「嫌だ」
「……じゃあもう少しだけ」
嫌なんだよ。お前がどっか行くのが。なんで? 分からない。
開けられない箱がずっと視界の中にある。
中身はずっと不確定のままだ。
読んだ証に、何か置いていくことができます。好きなものを置いていってください。