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夏の夜の

 長い長い日記を書き終えて、やっと布団へ潜ろうかと思っていると、外から誰かに見られているよう 長い長い日記を書き終えて、やっと布団へ潜ろうかと思っていると、外から誰かに見られているような気配がら入っておいで。いつだって歓迎するから」

「ん~」

 トウヤの髪を梳きながら、布団へと誘って座らせた。せっかくの可愛らしい来訪者をそのまま帰したくないと思ってしまうのは、私が寂しがりだからなのだろうか。

「今夜はここで眠ってくれるかい?」

「ええの? 俺……」

「構わないよ。むしろ一緒に眠ってほしいんだ」

「そっか、……せやったら、そうさせてもらお」

 えへへ、と笑ってトウヤが布団に転がる。私もその横に寝転んで、夏掛けをかけてトウヤの方を向いた。

「君はいつも私の来てほしいときに来てくれるね。エスパーなのかい」

「そんなことあらへんよ、俺が来たくて来てんねんで」

「じゃあ同じことを同じタイミングで思っているということだね。ふふ」

「せやね、ふふ」

 トウヤの頭に手を伸ばす。髪に触れると、冷房が効いてきて少しひんやりとしていた。ゆっくり、ゆっくりと梳いていく。

「トウヤはあたたかいね。私は少し部屋を寒くして寝るのが好きなのだけれど、トウヤが来ると丁度いいよ。トウヤは寒くないかい?」

「ん、大丈夫やで。冬にいとくっついとるから」

「そうかい、それならよかった」

 そろそろ眠ろうとしていたところだったからか、尚更眠気が強まってくる。トウヤの顔を見るとうっとりとした顔で私を見ていた。

「トウヤ、かわいいね」

「冬にいもかわええよ」

「私も?」

「うん」

 くすくすと笑い合う。そのうち髪を梳く手が重たくなっていって、動かせなくなっていった。そろそろ眠ってしまう。眠りに落ちてしまう前に、トウヤに何か伝えなくては。

「トウヤ……大好きだよ、……愛しているよ……」

「……俺も、冬にい大好きやで。愛してる」

 眠いんやろ、とトウヤが私の髪を撫でる。ああ、そんなことをされたら――

 

 気が付けば朝になっていた。差し込む光で目を覚ます。トウヤはまだ眠っていた。

 そばかすのある顔が可愛らしくて、愛おしくて、鼻を指先でちょんと触れれば、むずむずと鼻を動かしてまた寝息を立てはじめる。

 なんて、幸せな朝だろうか。

 忘れてしまわないうちに、今の気持ちを残しておくためにメモ帳を取り出した。


読んだ証に、何か置いていくことができます。好きなものを置いていってください。